大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)5375号 判決 1990年10月09日
大阪市淀川区西宮原一丁目八番三三-三〇一号
原告
株式会社開健社
右代表者代表取締役
島田勝三
右訴訟代理人弁護士
福島正
右訴訟復代理人弁護士
松下守男
東京都杉並区永福二丁目六〇番六号
被告
株式会社自然医学研究会
右代表者代表取締役
山崎康平
右同
宮川政子
東京都杉並区久我山四丁目一二番八号
被告
山崎康平
被告ら訴訟代理人弁護士
及川昭二
主文
一 被告らは、原告に対し、各自金四九四万七二九八円及び内金一〇〇万円に対する昭和六二年六月一三日より、内金三九四万七二九八円に対する昭和六三年一一月二三日より各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 原告の請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、各自金二五七八万九一九三円及び内金一〇〇〇万円に対する昭和六二年六月一三日より、内金一五七八万九一九三円に対する昭和六三年一一月二三日より各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する被告らの答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 事案の概要
本件は、ともに電磁波を利用した健康器具(以下「プラズマ健康器具」という。)を製造、販売していた原告と、被告会社間の紛争であり、被告会社が原告の取引先等に対して別紙一の「お知らせ」と題する文書(以下「本件文書」という。)を送付したことが原告の営業上の利益を害し、その名誉や社会的信用を失墜させたか否かが争われた事案である。
第三 事実の経過
本件については、証拠(甲一、同二の一~三、同三、四の各一、二、同五、同六の一~四、同七の一~八、同八、同九の一~七、同一〇、同一一の一~一〇、同一二、同一三の一、二、同一四~一六、同一八~二〇、同二二の一、二、同二三~二六、同三四~四四、同四五の一~四、同四六、同五二~五四、同五六~五九、同六六~六八、同七〇の一、二、同七一、乙一、同三、四、同一二、~一四、同一六、同二七~四二、同四五、同四八~五二、同五七、検甲一~一五、証人金子美智子、原告代表者-第一、二回、被告山崎、弁論の全趣旨)によれば、左記一ないし六の事実の経過が認められる(但し、同六の事実については、後記のとおり当事者間に争いがない。)。
一 原告と被告会社が取り扱つていたプラズマ健康器具は、昭和初期に発明された夏井健康器に由来するといえるものであり、夏井健康器に由来するプラズマ健康器具は、昭和四七年ころに初めて商品化されたものであるが、昭和五四年四月以降は右プラズマ健康器具製造販売の草分け的存在である株式会社東洋理研(以下「東洋理研」という。)によつて製造されたものが「プラズマ・コントローラー」等の商品名で販売されていた。
二 被告会社は、昭和五七年一一月一七日、もと東洋理研の普及員(発売元から商品を仕入れて発売元の商品として販売するいわゆる販売員で、一般の取引における販売代理店ないし小売店に相当する。)であつた金子(旧姓菊池)美智子が中心となつて設立した会社であり、昭和五八年三月ころから「プラズマハート」等の商品名でプラズマ健康器具を製造、販売していた。
三 一方、原告は、昭和六〇年二月二〇日に設立され、同年一一月にもと東洋理研の役員であつた原告代表者がその代表取締役に就任した会社であるが、設立以来、原告代表者においてその形状等を定めた原告販売用のプラズマ健康器具の製造を被告会社に依頼し、同社から納入を受けた製品を「ゴールドプラズマ」等の商品名で、原告の商品として販売していた。
しかし、原告は、その後昭和六一年一二月から、これとは別に別の業者に製造させたプラズマ健康器具の新製品「ジツプストーン」(握り石)の宣伝、販売を開始し、更に、昭和六二年一月から、従来被告会社から供給を受けていた「ゴールドプラズマ」等の商品(以下「旧型『ゴールドプラズマ』等」という。)を改良して別の業者に製造させたものを、旧型「ゴールドプラズマ」等のモデルチエンジ製品(以下「新型『ゴールドプラズマ』等」という。)としてその宣伝、販売を開始した。
四 右原告の動きを知つた被告会社は、原告を牽制するために、昭和六二年一月二七日付書面で原告に対し、「従前、原告の販売先から原告へ入金があつた分につき毎月二五日締め翌月一〇日支払いであつたが、今後、被告会社から原告への納入分につき毎月末締め翌月末支払いとする。」旨の支払条件変更の申し入れをしたが、原告は、これを拒絶し、被告会社に対し、昭和六二年二月一二日付書面で同社との継続的取引関係を解消する旨の意思表示をした。
五 そこで、被告会社は、昭和六二年三月三〇日東京地方裁判所に本件原告を被告とする売買代金請求の訴えを提起する一方(同庁昭和六二年(ワ)第四一〇一号売買代金請求事件。以下「本件売買代金請求事件」という。その第一回口頭弁論期日は同年五月一四日と指定された。)、同年四月六日大阪地方裁判所に原告を債務者(被申請人)として、原告の販売する「ゴールドプラズマ」等は被告商品の模造品であるのでその製造、販売の禁止を求める旨の不正競争防止法違反仮処分命令申請をした(同庁昭和六二年(ヨ)第一四一〇号不正競争防止法違反仮処分命令申請事件。以下「本件仮処分申請事件」という。その第一回審尋期日は同年四月二七日と指定された。)。
六 そして被告会社は、更に、昭和六二年四月一五~一七目ころ、被告山崎の著書である「ミニ健康法」(発売元株式会社婦人生活社。以下「本件書籍」という。)を同封のうえ、「株式会社自然医学研究会代表取締役山崎康平」名の昭和六二年四月一五日付「お知らせ」と題する本件文書を、別紙二「本件文書送付先一覧表」記載の原告の普及員等に速達郵便で送付した(争いがない。)。
第四 争点とこれに対する判断
一 争点1(本件文書送付行為の違法性)
1 本件文書には、次のような記載がある(なお、本件文書において開健社とは原告のことであり、当社とは被告会社のことである。)。
(一) 当社は去る四月六日、大阪地方裁判所に…(株)開健社(代表取締役、島田勝三)をゴールドプラズマ(当社商標登録申請)の模造品の製造販売の差止損害賠償請求に先立つ「不正競争防止法違反仮処分命令」の申請をしました。第一回の取調べは来る四月二十七日に行なわれます。
当社ではこの外にも、同社への売掛金の本訴裁判請求を東京地方裁判所に提訴し、第一回目の口頭弁論は五月十四日となつております。
(二) 今回このような裁判手続をとることは開健社の不法行為を是正するためのものです。
(三) なお、二月以降に開健社よりお求めになられましたものについて模造品のご心配がございましたら当社まで書面でおたづね下さい。
(四) 追伸
夏井寅吉先生の遺志をついだご子息、夏井孝男氏が自然医学研究会の会長です。
(五) 当社はプラズマハート、及びゴールドプラズマの商標名で夏井健康器の製造販売を行なつております。
2(一) 右本件文書の記載内容に照らすと、本件文書には、原告が、被告会社において製造販売している真正商品「ゴールドプラズマ」の模造品を製造販売し不正競争防止法違反の不法行為を行つていると直截に記載されている訳ではないが、文書全体としては、「原告が右のような不法行為を行つているので、原告の右不法行為を是正するために前記仮処分命令の申請や提訴を行つたことを知らせるとともに、二月以降に原告から購入したものについて模造品の心配があれば被告に書面で尋ねてほしい。」旨連絡しているものと理解され、これを読む者に対し、原告が右のような不法行為を行つているとの印象やその旨の疑念を強く与えるものになつているということができる。
(二) もつとも、本件文書全体の記載内容それ自体についてみると、被告会社が「ゴールドプラズマ」の商品名(商標)を使用して製造、販売していたところの夏井健康器に由来するプラズマ健康器具の模造品を、原告が製造、販売していたこと、すなわち原告が右のような不法行為を行つていたこと以外の事実(<1>被告会社の本件仮処分申請事件の申請とその第一回審尋期日、<2>被告会社の本件売買代金請求事件の提起とその第一回口頭弁論期日、<3>夏井寅吉の子息である夏井孝男が自然医学研究会の会長であること、<4>被告会社が「プラズマハート」との商品名で夏井健康器に由来するプラズマ健康器具の製造、販売を行つていること、<5>「プラズマ健康法」、は被告会社の登録商標であること)に関する記載は、いずれもそれ自体としては事実に即した記載であると認められる(甲四の一、二、同三四、同三八、乙一二、同二六、同二八~三二、同三五、同四六の一、二、同四七、四八、検甲一二~一五、証人金子美智子、被告山崎、弁論の全趣旨)。
しかし、原告が右のような不法行為を行つていたことについては、これを認めるに足る証拠はない。すなわち、被告会社の設立者である金子美智子が「ゴールドプラズマ」の商標登録出願をしていたことは認められる(甲五五の一)が、被告会社が右商標登録出願をした訳ではないし、ましてや同社が右商標を使用して「ゴールドプラズマ」なる商品を自社の商品として販売していたことを認めさせるに足る証拠はない。証人金子美智子の証言中には、一部これにそう趣旨の部分もあるが、これを裏付ける客観的な証拠はなく、採用できない。また、既にみてきたとおり、被告会社が、前記仮処分申請や提訴を行つたことは事実であるが、右は(ことに、右仮処分申請は)あくまでも、被告会社の一方的な主張に基づくものにすぎず、原告の右不法行為の存在を認めさせるに十分なものではない(ちなみに、本件仮処分申請事件は、昭和六二年六月二四日の第三回審尋期日において、被告会社が右仮処分申請を取り下げたことにより終了した-甲四四。また、本件売買代金請求事件は、被告会社請求の売買代金は六七一万四八六五円であつたところ、平成元年六月一九日の同事件第一二回口頭弁論期日において、原告が被告会社に対して和解金二〇〇万円を支払う旨の裁判上の和解が成立したことにより終了した-乙一二、同四八。)。そして、他にこれを認めさせるに足る証拠はない。
そうすると、本件文書は、右原告の不法行為の点については、事実に反する記載をしたものであるといわれても仕方のないものであるというべきである。
(三) そして、プラズマ健康器具は、その原理や機能等を正確に理解することが、一般の使用者にとつてはもちろん、これを取り扱う普及員等にとつても必ずしも容易なものでなく、その性能を計数的に測定することも困難なものであることから、一般の商品のように、店頭販売はほとんど行われず、販路の大部分は普及員の販売活動に頼つており、原告においても同様であること、従つて、普及員等が自己が取り扱う商品の発売元ないしその商品について持つイメージ、信頼感はその販売を促進するうえで重要な意味を持つていると考えられること及び前記本件文書の記載内容に照らすと、被告会社が行つた本件文書の送付行為は、これを受け取つた原告の普及員等に対し、原告は模造品の製造、販売という不法行為をして裁判を起こされるような業者であるとの不信感を持たせるとともに、今後原告と取引を継続していると、種々のトラブルに巻き込まれて普及員等自身が営業上の損害を被つたりするのでないかとの危惧の念を生じさせ、原告との取引を打切つたり、取引量を減少させたりするおそれは十分にある行為であつたと認められる。こうした観点からすると、被告会社が行つた本件文書の送付行為は、原告に売上減少等の財産上の損害を与えるのはもちろん、右文書の記載内容からみて、原告の名誉や、社会的信用失墜の原因にもなりうる性質の行為であつたというべきである。
(四) そして、本件文書送付行為が、原告が新商品(ジップストーン)や新型「ゴールドプラズマ」等を本格的に売り出そうとしている時期になされたものであると認められる(前記第三の三、六の判示事実、甲五四、原告代表者-第二回)ことや証人金子美智子の証言、被告山崎の供述及び弁論の全趣旨に照らすと、被告山崎は、被告会社の営業上、その代表者として原告の右のような動きを牽制する目的で本件文書送付行為を行つたものと認められる。
(五) 以上のような点を総合考慮すると、被告会社が行つた本件文書の送付行為は、競業者間の営業活動として社会通念上許される範囲を超えた違法な行為であるというべきである。
この点につき、被告らは、「本件文書の発信人の記載は、被告会社の住所、商号、代表者名に誤記歪曲はなく正確なものである。本件文書は、名宛人である原告の普及員(取引先)に事実を伝えるお知らせという趣旨でまとめられたもので、文書中には威圧的、脅迫的あるいは下品な表現は全く用いられていない。本件文書の本文の記載内容の中心は、<1>被告会社の本件仮処分申請事件の申請とその第一回審尋期日、<2>被告会社の本件売買代金請求事件の提起とその第一回口頭弁論期日、<3>原告によるゴールドプラズマの模造品の製造販売であるが、いずれも事実に即して真実を記載したものである。本文に続く末尾の追伸文も被告会社の概要紹介と本件書籍を同封することについてのおことわり文である。従つて、本件文書送付行為は、適法妥当な行為であり、違法性はない。」と主張し、右<3>を除いて、被告らが指摘する部分が格別事実に反するものでないことは前記のとおりであるが、そのことは右<3>を中心とする前記事実に反する記載を正当化できるものではなく、被告らの右主張は採用できない。
また、証人金子美智子及び被告山崎は、原告の新商品に関する問合せの電話が原告の取引先から被告会社に頻繁にかかつてきたため、その対応が面倒なので本件文書で説明することにしたとの趣旨の供述をするが、右のような問合せがあつたことを裏付けるに足る客観的な証拠はなく、仮に、それが事実であつたとしても、右事実は、前記本件文書の送付行為を正当化するに十分なものではない。
二 争点2(被告らの責任)
これまでにみてきたところによれば、被告山崎は、被告会社代表者として被告会社の営業上、前記本件文書の送付行為を行つたものであり、右行為により原告の営業に売上高減少等の影響が生じるであろうことは十分承知していたものと推認することができる。もつとも、被告山崎は、右本件文書の送付行為を独断で行つたものではなく、これをするに当たつては、被告会社内において、前記金子美智子及びその夫で当時被告山崎と共に被告会社の代表者であつた金子実と協議し、また、弁護士の意見も参考にしたうえで、本件文書の内容であれば原告の名誉、信用を毀損することにはならないと判断して右行為を行つたものと認められる(甲三四、乙四五、証人金子美智子、被告山崎)。右事実によれば、被告山崎は、原告の営業上の名誉、信用の毀損についてまで故意があつたというべきか否かについては議論の余地はあるが、前記本件文書の内容からすると、本件文書送付行為に基づく結果については、故意又は過失の責任は免れないというべきである。
右によれば、いずれにせよ、被告らには、本件文書送付行為によつて原告が被つた後記損害を賠償する責任がある。
三 争点3(原告の損害の有無・損害額)
1 売上減少に伴う逸失利益
(一) 原告が本訴損害賠償の基礎として、本件文書送付行為後の売上高減少を主張する別紙三「取引先別原告売上高減少状況一覧表」(以下「売上高減少状況一覧表」という。)記載の一〇個所(同一表覧番号3ないし5以外のもの)について、原告主張期間(本件文書送付直後の昭和六二年五月から昭和六三年一〇月までの一八か月間)の売上高の変化をみると、原告主張の右売上高減少状況一覧表(但し、右一覧表の番号4の総売上高(B)欄に1,261,700とあるのを1,262,300と、月間平均売上高(b)欄に70,094とあるのを70,128と、減少額・増加額欄に15,950とあるのを16,550と、それぞれ訂正する。)記載のとおりの売上高減少と、そのうち、五十嵐邦男、南日本パナユーズ及び長野圧送の三個所は、本件文書送付直後である昭和六二年五月以降、原告との取引が全くなくなつているものであること(長野圧送は、本件文書の送付先に含まれていないが、被告会社の本件文書送付行為直後に、原告に対して同文書の内容について抗議の電話をし、その後原告との取引を完全に止めたものである。)及びその余の七個所に対する各総売上高(但し、羽瀬巧については月間平均売上高)の減少率は、栃木健康教室が七一パーセント、予防医学研究会が九八パーセント、自然食品の山口が九一パーセント、谷口自然食品店が三〇パーセント、寿自然食品センターが七八パーセント、羽瀬巧が二四パーセント、明日香が八四パーセントであること(なお、予防医学研究会については、昭和六二年一一月以降原告との取引が全くない。自然食品の山口については、本件文書送付後は昭和六二年七月、九月に、明日香については、昭和六二年七月、九月、一〇月、昭和六三年三月に取引があつただけで、その余の月は原告との取引が全くない。)が認められる(甲四七、同四九、五〇、同六三の一~一三、原告代表者-第一、二回、弁論の全趣旨)。
(二) しかし、一方、本件文書の送付先であつても、別紙売上高減少状況一覧表番号3ないし5の有限会社3M、こはらアツトイーズ、名古屋プラズマ健康教室のように本件文書送付後も売上高が減少せず、むしろ逆に増えた例もあることは原告の自認するところであり、これら売上高変動の原因となりうる事情としては、本件文書送付行為以外にも、<1>原告・被告会社間の継続的取引関係が本件文書送付に先立つ昭和六二年二月に解消されていること、<2>また、少なくとも別紙売上高減状況少一覧表番号7、16の予防医学研究会及び寿自然食品センターの二個所については、右原告・被告会社間の継続的取引関係解消に伴い、被告会社の金子実による旧型「ゴールドプラズマ」等の宣伝、販売活動とでもいうべき講演会がなくなつたこととの間に関連性が全くないとはいえないこと(甲六〇、六一、同六二の一~四、証人金子美智子、原告代表者-第一回、弁論の全趣旨)、<3>前記のとおり原告の設立は昭和六〇年二月であり、旧型「ゴールドプラズマ」等の販売開始は同年三月であるから、本件文書送付当時、原告の営業活動は開始後二年余を経ていたことになるが、そもそもプラズマ健康器具は毎日消費されるような消耗品ではないから、原告としては新しい普及員の開発等をしないかぎり、そろそろ売上が伸び悩む時期に差し掛かつていたということも考えられること、<4>原告の営業活動自体、昭和六二年一月の新型「ゴールドプラズマ」等の販売開始、翌二月の被告会社との継続的取引関係の解消に伴う原告取扱商品切替えと値上げ(旧型「ゴールドプラズマ」等は他社販売のプラズマ健康器具よりも低価格であつたが、新型「ゴールドプラズマ」等は他社並みの価格になつた-甲二~四の各一、二、同二一、同五八、五九。)、同年七月の「ゴールドプラズマ」等から「ジツプヒーラー」への商品名の変更(甲五九、乙一三、一四、原告代表者-第一、二回)といつたように大きぐ動いたこと等が考えられる。
(三) そして、原告が製造、販売するプラズマ健康器具は消耗品ではなく、常時安定して売れ続ける商品ではないことは、本件文書送付前の一八か月間(昭和六〇年一一月から昭和六二年四月まで)の売上状況をみても、別紙売上高減少状況一覧表記載の一三個所の取引先のうち、番号13の谷口自然食品店、同18の羽瀬巧の二個所を除く一一個所については、原告の月間売上高が○である月が、多い所では合計一五か月、少ない所では合計二か月あつたこと(甲四九、五〇、同六三の一~一三)によつて裏付けられている。
(四) 以上のような事情を総合考慮してみるに、本件文書送付行為に伴う売上高減少の有無をみる期間としては、<1>右のような商品の売上状況の不安定性や、<2>前記のような取引形態からすると、一旦、本件文書のような内容の文書が原告の普及員等に送付された場合、これによつて生じる原告商品に対する疑念を完全に解消し信頼を回復するには、事の性質上、日常の営業活動の中での持続的な信用回復の努力とそのための一定期間はどうしても必要であると考えられること等を考慮すると、原告主張の一八か月をとつてこれをみるのもそれなりの理由があるというのが相当である。しかし、売上減少額との関係では、被告会社による本件文書送付行為は一度だけであり、その他に同種の文書が被告会社によつて原告の取引先等に送付された形跡はないことや、前記のように売上高変動の原因となりうる事情は本件文書送付行為以外にも色々と考えられることを考慮すると、右の期間を通じてこれをみた場合、本件文書送付行為と相当因果関係にあるのは、全体の四分の一(二五パーセント)程度と認め、その限度において被告らの損害賠償責任を認めるのが相当である。
(五) そこで、進んで、原告の損害額についてみるに前記一〇個所の取引先に対する各売上減少額は、前記別紙売上高減少状況一覧表該当欄記載のとおりであり、その合計額は金三五〇八万七〇九六円である。
また、前示の原告プラズマ健康器具の販売形態、証拠(甲二の一、二、同一〇、同一八、同五八、五九、検甲一~六、原告代表者-第一、二回)により認められる右健康器具の構造、材質、仕入価格及び販売価格、並びに証拠(甲六四、原告代表者-第一、二回、弁論の全趣旨)によれば、原告の利益率(売上高から売上原価を差し引いた純利益)は、売上高の四五パーセントを下らないものと認めるのが相当であり、他に右認定を左右する証拠はない。
従つて、本件文書送付直後の昭和六二年五月から昭和六三年一〇月までの間の売上高減少に伴う原告の逸失利益(本件文書送付行為と相当因果関係にある原告の損害額)は、右売上高減少合計額金三五〇八万七〇九六円×二五パーセント×四五パーセント≒金三九四万七二九八円である。
2 名誉、社会的信用失墜による無形損害
(一) 原告は、本件文書送付により原告が名誉、社会的信用の失墜のために被つた損害は、金額に見積もつて少なくとも金一〇〇〇万円を下回ることはないと主張する。
(二) 前記本件文書の内容はこれを読む者に対し、原告の製品は模造品であるとの印象、ないしその疑念を強く残すものになつているものということができ、その意味で、原告は、被告会社の本件文書送付行為により単なる逸失利益の賠償だけでは回復し切れない名誉、社会的信用毀損に伴う無形の損害を被つたものと認めるのが相当である。そして、その金額については、本件文書送付行為の一回性等既にみてきた諸搬の事情を総合考慮すると、原告の無形損害金は一〇〇万円と評価するのが相当である。
第五 結論
よつて、原告の本訴請求は、被告らに対し各自金四九四万七二九八円及び内金一〇〇万円に対する昭和六二年六月一三日(本件訴状送達の日の翌日)より、内金三九四万七二九八円に対する昭和六三年一一月二三日(本件文書送付行為による原告の損害額が確定した後)より各完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度(但し、これは被告らの不真正連帯債務である。)で理由があるから、これを認容し、その余は失当であるから棄却することとして、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項但書を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用し、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上野茂 裁判官 長井浩一 裁判官 森崎英二)
拝啓、陽春の候ますますご清栄のこととおわび申し上げます。
さて、突然のことで きになるのではないかと し致しますが、次の事をお知らせ致-ます。
当社は去る四月六日、大阪地方裁判所に 大阪市淀川区西宮原一の七の一五の六一一(株)開健社(代表取締役、島田図三)をゴールドプズマ(当社商 登 申 )の 品の製造販売の差止損害賠償請求に先立つ「不正競争防止法違反仮処分命令」の申 をしました。
第一回の取 べは来る四月二十七日に行なわれます。
当社ではこの外にも、同社への 掛金の本訴裁判請求を東京地方裁判所に提訴し、第一回目の口頭弁論は五月十四日となっております。
当社は人を非 したり、中 したりするのは好みません。今回このような裁判手続きたとることは開健社の不法行為を是正ずるためのものです。
普及員の皆様にこのようなお知らせをすることは当社の本意ではございませんが、又、これらの事を伏しておくのもどうかとも考えた結果、お知らせする!事に決めたのでございます。
当社の真意をご理解いたゞき今後ともよろしくご協力のほどお願いいたします。
なお、二月以降に開健社よりお求めになられましたものについて 造品のご心配がございましたら当社まで書面でおたづね下さい。
昭和六十二年四月十五日
東京都杉並区方南二の二三の九の四〇八
株式会社 自然医学研究会
代表取締役 山崎 平
追伸
夏井 吉先生の 志をついだご子 、夏井孝男氏が自然医学研究会の会長です。
当社はプラズマハート、及びゴールドブラズマの商標名で夏井健 器の製造販売を行なっております。
現在、同健 器とその関連商品は十八種類のものがございます。
私もさまざまな健画法を研究いたしましたが、その最高クラスにあるのがプラズマ健 法です。(以前に書きました拙著「ミニ健 法」を恐 ながら同封させて頂きます)
「プラズマ健画法」は当社の登 商 です。 (第一九二九五一一)
(別紙二)
本件文書送付先一覧表
番号 送付先 送付先の住所
1 栃木健康教室 増渕 常子 栃木県宇都宮市
2 横田香代 神奈川県相模原市
3 (有)3M(サンエム)米沢幸子 長野県松本市
4 こはらアツトイーズ 小原竹代 愛知県名古屋市
5 名古屋プラズマ健康教室 大橋弘明 愛知県名古屋市
6 近江綜合治療院 栫井 滋賀県大津市
7 予防医学研究会 岡田光雄 京都府京都市
8 宇宙プラズマ健康友の会 石原幸長 兵庫県神戸市
9 望月書道芸術院 望月美佐 兵庫県神戸市
10 自然食品の山口 山口等司 兵庫県神戸市
11 刀禰久美子 兵庫県神戸市
12 豊崎行則 兵庫県加古川市
13 谷口自然食品店 谷口芳春 兵庫県姫路市
14 健康サロン 岸敏男 兵庫県姫路市
15 大谷重友 島根県益田市
16 寿自然食品センター 山下康子 山口県山口市
17 五十嵐邦男 愛媛県松山市
18 羽瀬巧 大分県佐伯市
19 南日本パナユーズ(株) 田鍋恵三・堀之内吉幸 鹿児島県児島市
20 明日香 砂川芳子 沖縄県那霸市
(別紙三)
取引先別原告売上高減少状況一覧表
<省略>
* 番号は別紙二「本件文書送付先一覧表」の「番号」欄記載のものである。
* 番号3・18については、S.60、11以降の取引開始であるため、「S.60.11~S、62.4の月間平均売上高」は、同期間中の総売上高を、取引開始後の月数で除して算出した。なお、取引開始年月は「取引先名」欄に()書きしたとおりである。
従つて、番号3・18の取引先の「減少額」は(a-b)×18か月、他の取引先の「減少額」はA-Bの計算式により算出した。
* 減少額合計の算出に当たつては、番号3・4・5の増加分は算入せず、他の取引先の減少額のみを合計した。